2008年2月10日日曜日

私の好きな本⑩R.M.リルケ「若き詩人への手紙」

自宅にある古い新潮文庫は74年に刷られたもの。75年大学に入って、1年生後期の小松原先生のドイツ語の授業の教材がリルケの詩だった。本当に難解だった。ほとんど理解できなかったように思う。にもかかわらず、教室の最前列でうっとり、リルケの詩を読む先生のドイツ語を聞いている女の子がいる。かなわないと思った。
その頃買ったのだと思う。この本でヤコブセンとロダンを知った。
文庫本で50ページほどの短いものだが、最も手にした回数の多い本だと思う。しかし、この文章を書くに当たって、もう一度手にとって読んでみたが、本当に真摯にリルケの声を受け止めてきたのか自信がない。また本当にリルケの言葉を理解していたのか自信がない。
“何よりもまず、あなたの夜の最も静かな時刻に、自分自身に尋ねて御覧なさい、私は書かなければならないかと”
芸術とは厳しいものだ。
“必然から生まれるとき、芸術作品はよいのです”
芸術作品だけのことではないはずだ。人生にも同じことが言える。自分自身に尋ねてきたのか?
訳者の高安氏は“この手紙を読んで力を得ないものは、既に詩人の資格がない”と述べている。厳しく自分を見つめているのか否か、問い詰められている息苦しさがある。
味読すべき一冊である。少し訳が古くなってきているとは思うが、じっくり想像力を働かせ(若き詩人の手紙はないから想像力を働かせることが必要だ)、自分を見つめるための貴重な一冊であると思う。もう一度ゆっくり読むことにする。今からでも手遅れではないはず。

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