2008年2月3日日曜日

私の好きな本⑤サガン「悲しみよこんにちは」

サガンをずいぶん読んでいた時期がある。あれは大学生の頃だったのだろうか?サガンは女性が読むものという印象があったから人前で読むことはなかった。それと、その頃出ていた文庫本はほとんどすべて読んだはずだが、どれもストーリーは覚えていないのが不思議だ。
ストーリーではなく、雰囲気を読んでいたのかもしれない。
昨年なにがきっかけだったか忘れたが、新潮文庫で「悲しみよこんにちは」を買った。
”ものうさと甘さがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しい、りっぱな名をつけようか、私は迷う。”
いきなりと惑わせるような文章ではじまる。
”安易なことを考えるのは快いと自分に言い聞かせた。夏だもの。”
”夏だもの”に惑わされつつ、共感を覚える自分がいる。
いいんだよ、自分の感覚に自由に発言して。
微妙な心理の描写や小説自体が持つ雰囲気が素晴らしい。朝吹登水子さんの翻訳も華麗なまでに美しい。
この小説は1953年に書かれている。サガン18歳のときの作品。処女作。サガンは2004年まで生きていたとのこと。これも驚きである。

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