2008年8月5日火曜日

深夜特急5

トルコ、ギリシア、そしてイタリアまでの地中海の船旅。
もうここには過酷な旅はない。
交渉・値切りをする旅はアジアの旅であった。イスタンブールはボスポラス海峡によってアジア側とヨーロッパ側に分かれている。
沢木はイスタンブールに着いたことで、終着地ロンドンまではまだまだ距離がはるかあるにも関わらず、早くも旅の終りを感じはじめている。旅の終りということもあるが、西欧文明社会・先進国に戻ってきてしまったという感触があるのだろう。
ギリシアのペロポネソス半島をほとんど一周して、いよいよイタリアへ船で向かう船の中で沢木は、バランタインをほぼ一本飲み干し、最後の黄金色の液体を地中海に注ぐ。旅の最後の儀式であるかのように。
ここで、「終わってしまった」という喪失感が沢木を襲う。

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