2008年3月7日金曜日

「悪童日記」アゴタ・クリストフ

はじめの数行で引き込まれたこの物語は、私たちが住んでる世界とは全く別の世界を描いたものであり、現代日本人の想像の範囲を超えている。2人の双子の少年は限りない悪事を働き、したたかに成長する。それは生き抜くための手段である。しかし、文章は内容にも関わらず不思議なユーモアを帯びており、やりきれなさは残らない。とはいえ、ノンフィクションではないが、戦時下において弱者である老人や子供はこうすることでしか生き残れないであろうことをこの物語は再認識させてくれる。その意味ではすぐれて反戦文学であるともいえる。
一方で、ノンフィクションなのか、フィクションなのかを考えることを忘れさせるすぐれたストーリーテラーである。

0 件のコメント: