2009年2月1日日曜日

須賀敦子全集1

慈しむように読みたい文章。
深い経験と思索によってつづられた文章。
静かで、古い匂いがする、古書店のような懐かしいか匂い。
周囲の人たちへのやさしいまなざし。
一人の人間について書くときの気持ちの奥まで理解しようとする筆致の優しさ、的確さ。
最後のいくつかのエッセイは雑誌ミセスに掲載されたものだが、各回一人の人間を書いているのだが、それは見事で、想いの深い文章である。
また、これは「コルシア書店・・・」の中の文章だが、”自分が夫人のベッドを占領していて、・・・・・・・・に気付いたのは、二日後に葬儀が済んでからだった。”
深い深い悲しみを須賀さん自身が経験して体得させられたやさしさだということに気付かされる。
”お金もないのに、家具もないのに、本の話ばかりして”
何度か出てくるこのフレーズにははっとさせられる。こんなに本に対して純粋であることはないよね。
シェラール・フィリップについて書いている文章は、この人もいい男は好きなのだと思うことができてホットさせられる。
さて解説は池澤夏樹。須賀を”完全に異国に生まれなおした人”と表現する。そして、須賀はなによりも”よりよく生きよう”とした人”だという。
何とイタリアとミラノを深く生きた人だろう。

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